一般の百人一首は、上(かみ)の句を読み上げて、下(しも)の句が書かれた取り札を取り合います。上の句の詠い出しを聞いただけで下の句をさっと思い浮かべて、人より少しでも早くその札を取るところに、勝負としての面白さがあるのです。その歌全体の意味もよくわきまえていた方が取りやすいでしょう。いわば、百人一首は「教養」を争うゲームであるという面もあるのです。
 それに対して屯田兵の中から生まれた「板かるた」は、下の句だけを読み上げます。
 上の句を聞いて下の句を連想するのではなく、読み上げられた下の句をそのまま素早く取り合うのです。普通の百人一首のゲームに比べて、遙かにスピーディで、豪放な競技だといえます。まさに、屯田兵たちの中から生まれて育った競技といえましょう。
 そして、この豪快な競技には、「紙」ではなく「木」で作られた取り札がぴったりなのです。